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暗黒の惑星!?

最新の研究結果を、わかりやすく伝える

暗黒の惑星!?

(c) David A. Aguilar (CfA)

2011年08月13日(日本時間)に「炭よりも黒い暗黒の惑星を発見」というニュースが流れた。
(参照元:CNN / AFP

「暗黒の惑星を発見」と言われると、「デススター」みたいな惑星が発見されて、そこでは機械仕掛けの体を持った悪人が他の惑星への侵略計画を企んでいそうだ。だが、そっちの想像を膨らませる前にまじめに研究内容をみてみよう​。

地球から750光年離れた恒星(名称:TrES- 2)の周りをまわる惑星(名称:TrES-2b)がある。そこから来る光の量を「Kepler」という宇宙望遠鏡で測ってみて、そのデータを色々計算してみたところ、この惑星は光をほとんど反射しておらず「暗い=黒い」とい​うことがわかった、というものが今回の研究の要約だ。

明るさを推測する方法

「望遠鏡を使って色がわかった」というが、残念ながらこの惑星はものすごく遠いので、現在の技術では望遠鏡を覗いて、その見た目で色がわかるわけではない。実際に測ったのは、惑星(TrES-2b)が出した光と恒星(TrE​S-2)が出した光の2つを足した光の量である。これをしばらくの間観測しているので、時々刻々の光の量の変化がわかる。

そもそもその光の量が変わる主な原因は、

  • i) 恒星の歪み
  • ii) 相対論的ビーミング効果
  • iii) 惑星が出す光の量

である。

ここで読むのを諦められると嫌なので、それぞれの説明は省こう。(なんだか難しそうだが、実は原理はそれほど難しくないので、興味があれば調べてみて欲しい。)

今回は上の3つの効果それぞれをコンピューターで計算し、「惑星が恒星の光を反射する割合=反射率」を導きだした。その結果、反射率はせいぜい3%(もう少し詳しく検討するとおそらく1%以下)だったことがわかったのだ。

※詳しくはコラムの最後に掲載しておく。

反射率1%以下

ちなみに地球の反射率は37%、木星は52%なので、1%以下という反射率が低いということがわかるだろう。物体から来た光を受けることで我々はその物体を見ることができるが、恒星から受ける光の1%以下しか反射せず、我々​が見てもほとんど光を感じられないので、ニュースでは「暗黒の惑星」と呼ばれたのである。

報道発表で公開された想像図をみると、赤黒く描かれている。

では、なぜここまで暗いのだろうか?

惑星の大気が光を吸収していると考えられるのだが、ここまで暗い理由を完璧に説明することは難しい。なぜなのだろうか、考えを巡らせてワクワクしてもらえると嬉しい。(ただし、光を吸収する装置が大気上空に敷き詰められており、その下では機械人間が悪巧みをしているなどという想像はおすすめしない。)

現在の科学者の見解は機会を見て紹介することにしょう。

雑記

最後に、このニュースに関係するこぼれ話を少し紹介しよう。

・ポスドク

今回の研究は、David Kipping氏とDavid Spiegel氏という2人のDavidさんによるものである。

Davidは氏名の名の方なので、もちろん2人に血縁関係は無い 。(Kippingさんには会ったことがないが、「太陽系の外に月(衛星)を見つける」という研究もしており、その成果が出たときにはこのコーナーでも紹介したい。)

2人とも僕と同じで博士研究員(ポスドク)と呼ばれる身分である 。残念なことに、科学者は身分が上がるにつれて研究以外の雑務に振り回されるようになるので、ポスドクは最も研究に専念できる良い身分とも言える。

しかし、この身分は1-3年程度任期つきの契約社員のようなものなので、非常に不安定でもある。この為、一年中ずっと就職活動をしている感じで、めぼしい募集を見つけてはエントリーシートを書いているのだ。

若手といえどアラサーであり、(特に家庭を持っていたりすると)なかなか大変なのである。

・TrES-2b

今回、研究のターゲットとなったTrES-2bという惑星はいくつかの重要な特徴がある。

質量や大きさは木星とほぼ同じの巨大ガス惑星だが、恒星からの距離は0.03AU(AUは太陽と地球の距離で約1.5億キロメートル)でおよそ2.5日で恒星の周りを1周している。このような惑星はホットジュピターなどとも呼ばれている。

また、この惑星は常に同じ面を恒星に向けている(これを「潮汐ロック」と呼ぶ)と考えられている。

更に、TrES-2は今回使用したKepler宇宙望遠鏡の観測で重宝された恒星でもある。

これらについては別の機会に解説したいと思う。

荻原 正博(名古屋大学・理学博士)

※これまでのKepler宇宙望遠鏡の観測から、望遠鏡に届く光の量を刻一刻と測ったデータがある。一方、上記で述べている3つの効果で地球に届く光の量がどのように変わるのかをコンピューターで計算する。このときその3​つの効果がそれぞれどれくらい効くかはわかっていないので、これらを色々変えてみて、何通りもの結果をコンピューターで計算するのだ。

そして、望遠鏡で測ったデータとコンピューターで計算した結果が合うときを「答え」とする。その「答え」では、惑星が恒星の光を反射する割合=反射率はせいぜい3%(もう少し詳しく検討するとおそらく1%以下)だったのだ。

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