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「はやぶさ」が持ち帰ったサンプルからわかること

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「はやぶさ」が持ち帰ったサンプルからわかること

2011年8月、「はやぶさ」が持ち帰ったサンプルの「初期分析」の結果を記述した論文が、「サイエンス」誌の特集号に掲載された。ここでは、東大の橘さん(※1)との会話をもとに、それら成果の本質中の本質についてふれてみたいと思う。

サイエンス誌 8月26日号は「はやぶさ」が持ち帰ったサンプルが表紙となっている。

どういうサンプルなのか?

2010年6月の「はやぶさ」帰還は、社会現象と呼べるほどの盛り上がりとなった。これには、必ずしも全てが予定通りではなく、そのことが親愛の情を生んだということも原因となっているようだ。実際、小惑星イトカワにタッチダウンした際もサンプル取得は予定通りとはいかず、最大でも0.18mmというサイズの微粒子がイトカワから持ち帰られることになった。

そもそも、地球外物質なのか?

こんな微粒子であっても、いろいろと分析を行うことが可能である。粒子に含まれる酸素元素の様子が地球とは異なること、イリジウムという地球では見かけない元素が多くあったことから、微粒子が地球外、つまり、イトカワ起源であることが結論された。

どのぐらいの間、イトカワの表面にいたのか?

イトカワの表面から持ち帰ったことは確定したが、では、粒子はそこにどれぐらいの期間あったのだろうか?表面にある間、微粒子は、太陽風(※2)や宇宙線(※3)の照射という過酷な宇宙環境に曝されている。そして、その履歴は希ガス(※4)の分析から辿ることができる。そこからわかることは、微粒子が表面にとどまるのはせいぜい数百年であり、宇宙環境に曝される小惑星の表面はどんどん更新されている(削られている)ということである。

どこからイトカワ表面にやってきたのか?

微粒子を形作る鉱物の様子から、その粒子が過去においてどれほどの高温にあったかということを知ることができる。分析の結果、その答えは摂氏800度。この高温は、粒子が天体の内部にあったことを物語る。具体的には、20km以上のサイズの天体が破壊し、その破片が集まることでイトカワ(サイズ500m)になったが、その過程で内側にあった粒子がめぐりめぐって表面にいたところ、「はやぶさ」が捕まえたということらしい。

イトカワ表面では何が起きているのか?

地球の表面では、雨や風によって風化が起きている。宇宙では、「宇宙風化」が起きている。太陽系空間はたいへん希薄であるが、まったくの真空ではない。太陽から吹き出す太陽風と呼ばれるイオンの流れが太陽系空間を満たし、それがイトカワ表面を照射する。微小隕石も数多く飛び回っており、それらが高速でイトカワ表面に衝突する。この結果は、微粒子の表面において記録されており、電子顕微鏡で観察すると見えてくる。

「小惑星が宇宙空間に浮かぶとき、そこでは何が起きているか?」という疑問を、魅力的な、本格的に取り組む課題として定式化したというのが、「はやぶさ」の科学的成果である、というまとめ方はどうだろうか。今後、世界中の研究者が分析テーマを提案し、その中から選ばれたものが実施されるという競争的な研究活動を通じて、「はやぶさ」は、我々が宇宙の理解を深化させることに貢献していく。

藤本 正樹 (JAXA・宇宙科学研究所 教授)

  • ※1 東京大学 地球惑星科学専攻 助教
  • ※2 太陽から放出され高温の為に電離した粒子。
  • ※3 宇宙空間を飛び交っている原子核や素粒子。太陽風に比べてエネルギーが高い。
  • ※4 ヘリウム・ネオン・アルゴンなど。化学的に反応しにくいため、イトカワができた環境や、どれだけ時間が経ったかの推定に役立つ。

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