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「形成途中」の惑星? LkCa15b

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「形成途中」の惑星? LkCa15b

10月中旬に興味深い天体が検出されたという報せが入った。LkCa15と呼ばれる、おうし座の領域に存在する恒星である。

地球からおおよそ500光年離れたこの天体は、太陽とよく似た恒星であり、だがその年齢は、太陽46億年に対して200万年とまだ非常に若い。そのため、周りにチリとガスでできた円盤がまだ残っており(このあたりは惑星生成シミュレーターでもその通りになっている)その円盤の質量は、非常に大きいことがこれまでの観測により分かっている天体である。

今回、ハワイ大学のKrausらのグループは、ハワイ・マウナケア山頂にあるKeck II 望遠鏡にて、この天体の周囲を近赤外カメラで撮像を行った。「開口マスキング干渉法」と呼ばれる観測手法を用いて、超高分解能撮影を行うことで、巨大ガス惑星と思われる天体の検出に成功した。(※1)

木星のような巨大ガス惑星は現在、いくつも見つかっているが、とりわけこの天体が取り上げられたのには理由がある。

なんと、まだ「形成途中」である可能性があるというのである!

観測でとらえた「ぬるい、もや」

彼らは2009年から2010年の期間、波長の異なる2種類の赤外線について、それぞれ3回ずつ観測を行ったが、そのいずれの画像からも LkCa15 から約15AU (1AU:地球 - 太陽間の距離) 離れた領域に複数の光源と、さらにその周囲に広がって分布する「もや」のような構造が写し出された。

簡単に言うならば、熱い塊の周りにぬるいもやがかかっている、といったところだろうか。

撮影されたLkCa15の画像。左は広い範囲を撮影して円盤をとらえている。右はその一部を詳細に撮影している。青い点と赤いもやのようなものがかかっているのが分かる。青い点は赤い部分よりも温度が高い。

比較対象となる他の天体の像にはこのような像は見られなかったことからも、この天体に何か特有の現象が起こっていることが考えられる。

では、何が起こっているのか?ここからが楽しいところだ!(少なくとも僕らにとっては!)

惑星形成の証拠と、不可解な謎

このLkCa15の周りの円盤は、実は巨大惑星が形成した(している)証拠だと思われる「隙間」が開いていることが分かっていた。画像からも、円盤がドーナツ型に穴が開いていることが分かる。隙間が生まれるのは、惑星が生まれることで、円盤の成分(チリやガス)が惑星に取り込まれて失われるためだ。従って、この場所には惑星が形成されている可能性が高い。

観測された画像の解析結果によれば、惑星の質量は木星質量の約6倍で、温度の高いチリ(200℃以上!!)が取り巻いていることが示唆された。これは、巨大なガス惑星の周りをチリや(恐らくガスも)取り巻いている、つまり惑星が形成されている最中を捕らえたということになる。このような現象が観測されたのは初めてである。(※2)

しかし、太陽と地球の距離の15倍も遠いような極寒の場所で、なぜチリのもやが温められているのか?なぜ、予想よりも円盤の隙間(ドーナツの穴)が大きいのか?という疑問が残っていて、これらは現在はうまく説明ができない。今後、観測・理論面から説明が試みられるだろう。(※3)

観測面では、最近本格的な稼働を開始したチリのALMA望遠鏡などで、より精細な追観測を著者らは期待している。今回の赤外線では「チリ」が見えたが、ALMAのような電波望遠鏡では、同じ場所にある「ガス」を見ることになる。それぞれ、どのように惑星を取り巻いているのかが分かれば、また新しいことが分かるかもしれない。

原川 紘季(東京工業大学 地球惑星科学専攻)

(参照論文)Kraus, and Ireland, ApJ, 2011 http://arxiv.org/abs/1110.3808

  • ※1 開口マスキング干渉法:望遠鏡の鏡の一部を残してマスクすることで、光を干渉させて主星の光を遮断しつつ、分解能を上げる撮像手法。補償光学(AO)と組み合わせて、望遠鏡の分解能を最大限に引き出すことができる。
  • ※2 LkCa15の年齢・2種類の赤外線の画像の明るさを比較することで、温度や惑星の質量などが見積られる。
  • ※3 大きく広がったチリの温度が1年以上もの間、高いことについての説明は、筆者らも様々な仮説を立てて議論を行っているが、現在の巨大惑星形成シナリオでは、まだ十分な説明ができない。今回のチリが取り巻いているという結論は、荒い見積もりを行った結果である。また、この質量のガス惑星形成の際に予測される円盤の隙間の幅が、実際の観測よりも狭いことなど、いくつか疑問点がある。

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