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惑星の本当の質量?

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惑星の本当の質量?

東京工業大、ニューサウスウェールズ大、国立天文台、広島大、兵庫県立大からなる研究グループは、岡山天体物理観測所188cm望遠鏡とアングロオーストラリアン望遠鏡を用いた観測により、HD4732と呼ばれる巨星を周回する二つの巨大惑星を発見した。本稿筆者も共著者として本成果に連名している。

この惑星系の想像図 © OAO NAOJ

それぞれ惑星の名前はHD4732という、太陽のおよそ1.7倍の質量で、中心星の名前にb, c とつけられるが、それぞれ以下のような軌道をもつ。

惑星b: 最小質量 2.37木星質量 (木星の2.37倍の質量), 周期 360日
惑星c: 最小質量 2.37木星質量, 周期 2732日

360日という周期は地球の公転周期、つまり一年にほど近い周期である。加えてこの恒星は日本では南の低い位置に見えるため、一年のうち、常に決まった期間しか観測ができない。
つまり、このままでは惑星の軌道の一部が観測で分かるばかりで、全体が明らかにできないのである。

ならばどうするのか?

一つは単純に、時間がたち、星が見える期間に観測できる惑星の軌道が徐々にずれてくるのを気長に待つことだ。だが、それではあまりにも時間効率が悪過ぎる。

そこでもう一つの手段の、「より南の地で観測を行なう」ということをする。HD4732は南半球では空高く上るため、見える期間が日本よりも長くなる。従って、日本では夜間に沈んでしまって見えない季節の惑星の軌道を明らかにできるのである。

そのため、今回の日本とオーストラリアの天文台によるコラボレーションはこのような惑星に対して非常に有効であることが示された。

さて、ここで話題は少し変わるが、惑星とは、恒星よりも遥かに小さい質量の天体である。ニュースなどに出回る報告では惑星の検出が多く出回ることになるが、実際には惑星を見つける過程で、実は惑星系ではなく連星系だと分かることも多い。
今回の報告で用いられている「視線速度法」と呼ばれる観測法では、視線速度(RV)の変動の大きさが明らかに惑星よりも大きいと分かればすぐに恒星だと分かる。

しかし、それだけでは安心はできない。

視線速度法は「中心星の前後の動きだけを見ている」ため、地球から見たときの軌道の傾き(軌道傾斜角:上記参照)は分からない。仮にRVの変動が小さくても、それは軌道をほぼ真上から見ていただけで、実際には恒星レベルの質量が周っていることもあり得る。
つまり、軌道傾斜角が分からない限り惑星の「本当の質量」は分からないのである。

ただ、今回のHD4732の系は2つの巨大な惑星が中心星を回っているため、お互いの重力の影響が出てくることを利用して、この惑星系が長く安定して存在できる軌道傾斜角の範囲を理論的に調査できる。
軌道安定性のシミュレーションの結果、木星質量の28倍以下の天体なら安定して存在できることが示された。
これは褐色矮星(惑星と呼ぶには重過ぎるが、一般的な恒星よりも質量が小さい天体)であるため、今回の検出は少なくとも恒星ではないことが言えるのである。

多くの視線速度による成果と、Kepler衛星などのトランジットの成果から、数千もの惑星候補が検出されている現在でも、実は「本当にそれは惑星なのか?」という疑いが晴れない系がそれなりの数で存在する。(視線速度による検出はもとより、Kepler衛星による成果のうち最大で3割程度が恒星である疑いが出てきている)

今後、例えば「生命を宿しうる惑星」をより確かに決定する過程で、より正確な惑星の性質を決める必要が出てくるだろう。そのためにはこのような不確定な部分をいかにして取り除くかがカギとなってくる。

原川 紘季(東京工業大学 地球惑星科学専攻)

観測シミュレーターでHD4732 を見つけよう!

HD4732は秋に見える星です。解説のとおり、南の低い位置にあります。目印はくじら座ベータ星 (bet Cet)、そこから少しだけ南東(シミュレーター画面では左下)を調べると見つかります。

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