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クラウディングアウトで記者会見

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クラウディングアウトで記者会見

11月6日、『理の惑星』メンバーらの研究グループが新しい研究成果を発表しました。これについて各報道機関を集めての記者会見も行いました。下の写真がこのときの模様で、右から犬塚教授、私、小林助教です。

© S. Solahana

研究の概要

かなり大雑把に研究の内容を説明すると以下のようになります。

これまで、太陽系外惑星(系外惑星)の探査によって、1000個くらいの系外惑星が発見されており、系外惑星系の特徴が少しずつ明らかになってきました。明らかになってきた特徴の一つに「ホットジュピターの近くには他の惑星が発見されない」というものがあります。(ホットジュピターとは木星のような巨大ガス惑星で、恒星のすぐ近くの軌道をまわっているもので、灼熱巨大ガス惑星などとも呼ばれます。)現在の惑星系形成理論では、ホットジュピターの近くに惑星が形成しても良い、もっと言うと形成してしかるべきなのに、ほとんど他の惑星が発見されていないのです。

この謎に対して、私達の研究グループは「ハイブリッドシナリオ」という新しい惑星系形成モデルを考えることで、これが解決できるのではないかと考えました。ざっくり言ってしまえば、これまでの惑星系形成理論ではうまくいかないので、新しいモデルで考えてみようということですね。このハイブリッドシナリオに従って、惑星系の形成過程を模擬したコンピュータシミュレーションを行いました。ちなみに、このシミュレーションの実行には国立天文台所有の計算機を使用させて頂きました。

シミュレーションの結果、惑星形成の過程において、ホットジュピターの近くで地球程度の大きさの惑星が数個ほど形成するこということがわかりました。ところが、この数個の地球程度の大きさの惑星がよってたかってホットジュピターを恒星の方向へ押し込んで、最終的にはホットジュピターは恒星と衝突して飲み込まれてしまうということを発見しました。これにより最後に残るのは、数個の地球程度の大きさの惑星だけということになります。

これは、太陽系外惑星観測の特徴(=「ホットジュピターの近くには他の惑星が発見されない」)の起源を説明できます。つまり、ホットジュピターの近くに他の惑星が形成すると、それらがホットジュピターを追いやってしまい、「ホットジュピター & 他の惑星」という惑星系はできにくいのです。もう少し詳しい内容は、国立天文台のウェブページなどを参考にしてみてください。

クラウディングアウト

この研究成果のポイントは、「系外惑星観測における謎の起源を説明したこと」「ハイブリッドシナリオという新しい惑星形成モデルを提示したこと」ですが、それと共に「新しいメカニズムを発見して名づけたこと」も重要な結果です。

この新しいメカニズムとは、上記で説明した「地球程度の大きさの惑星がよってたかってホットジュピターを恒星の方向へ押し込む」という現象です。これを『理の惑星』メンバーがイラストで表したものが下の図です。

© A. Miyamoto/M. Ogihara/Nagoya Univ.

小さい惑星達によってたかって押し出されているホットジュピター、なんだか少し悲しくなってしまいますね。(実はホットジュピターと他の惑星はいわば「親」と「子」の関係でもあるのです。育てた子供達に追いやられる親…複雑な気持ちです。)

ところで、新しいメカニズムなのでこれを呼ぶ名前が必要です。私はこれを英語で"crowding-out(クラウディングアウト)"と名付けました。「押し出し」といったような意味で、経済学の用語でもあります。なぜ経済用語にしたかというと、およそ15年前に国立天文台の小久保英一郎教授が惑星成長についての新しいプロセスを発見し、それを経済用語から"oligarchic growth(寡占的成長)"と名付けたのですが、それにならったわけです。今後「クラウディングアウト」も流行ればいいなぁなんて思っています。(ちなみに、crowding-outについて良い日本語訳が思い当たらないので、思いついた方はぜひ連絡ください。)

おわりに

今回、はじめて記者会見を行ったのですが、これは予想以上に労力がかかりました。これまでラジオなどに出演したことはあったのですが、そのときはこちらはなにも準備せずにただ収録にのぞめば良いわけですが、こちら側からの発信である記者会見は事前に様々な準備が必要です。プレスリリースや記者会見の案内の原稿の執筆、関係各所と調整、会見場のセッティング、発表で使用する絵や動画の制作、プレスリリースの配布などなど、なんだかんだで3週間くらいは準備に翻弄されてしまいました。とはいえ当然これを私だけでやったわけではなく、直接的にはおよそ10人くらいの人に様々なサポートをして頂きました。感謝です。

実際に記者会見の感想ですが、一方的にこちらが話すというスタイルなので、記者の方々の理解度を確認しながら進められないというところがなかなか大変でした。また、名古屋大学総長室の真上という特別な開場を用意して頂いたこともあり、思った以上に緊張してしまいました。とはいえ良い経験になったので、また何年か後に、良い結果が得られた時に、このような発表をしてもいいかなとも思いました。

荻原 正博(名古屋大学・理学博士)

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