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PLANETPLANETシリーズ第1回 連星:敵か味方か?

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PLANETPLANETシリーズ第1回 連星:敵か味方か?

今回の『理の惑星』コラムは、海外研究者の解説記事を翻訳してご紹介します。

記事は「生命を宿し得る惑星」を主なキーワードにしたウェブサイトPLANETPLANETに掲載されているもので、フランスのボルドーに住んでいるアメリカ人研究者ショーン・レイモンド氏によって執筆されています。

原文ではしばしばかなり深い内容まで踏み込んでおり、従ってこの日本語解説も少々難解になってしまう部分もあるのですが、難しいながらも最後まで読んでもらえると、きっと新しい発見が得られると思っています。

また、本コラムは英語の記事を正確に日本語訳したものではなく、随所に意訳を施しており、文章の構成もしばしば変えていることをご承知おきください。レイモンド氏はなるべく平易な英語を使って記事を執筆していますので、本コラムに目を通した後に原文を読んでも良いかもしれません。

本シリーズは全5回を予定しております。シリーズ中に改善すべき点は改めていきたいと考えておりますので、ご意見・ご感想もお待ちしております。それでは第1回です。


原文:Binary stars: friends or foes?

2つの太陽を持つ系に存在する惑星

このPLANETPLNAETでは、生命を宿し得る惑星の存在や進化に影響するモノゴトを解説していくことを大きな目標としています。本日のテーマは「連星は生命が存在し得る惑星に対して善か悪か?」です。では、はじめましょう。

いきなり簡単に答えを言ってしまうと、「連星は悪」となります。こう言うと、みなさんの中には「スターウォーズに出てくる惑星タトゥイーンには生命がいたし、綺麗な夕日も見れていた」ことを思い出すかもしれませんが。まあ、いつでも必ず悪というわけではありません。

連星系とは、2つの恒星がお互いの周りをまわっている系を指します。(要は、太陽が2つある系ということですね。)夜空の星々を肉眼で見ると、連星も1つの恒星として見えてしまうのですが、恒星系の3分の1から半分は連星系だと考えられています。

連星系もモノによって色々な軌道をとっていて、お互いを数時間で公転する系(このとき連星間の距離が短い)もあれば、軌道を1周するのに100万年かかる(連星間の距離が長い)系も存在します。

そして、連星系に惑星が存在した場合、それは軌道によって2つのタイプに分けられます(下図)。いま恒星Aと恒星Bという連星を考えたとき、惑星Pが2つの恒星の周りをぐるりとまわる軌道をとる場合、これをP型(Primary型)と呼び、もし惑星Pが1つの恒星Aの周りをまわる軌道をとる場合、これをS型(Secondary型)と呼びます。

連星系に存在する惑星のタイプ。Haghighipour et al. (2010)より抜粋。

連星系で太陽系外惑星も発見されていますが、そのほとんどがS型軌道をとっています。(これまで50個以上の太陽系外惑星がS型軌道で発見されています。)ちなみに、このS型軌道の多くの連星間の距離は数千AUととても離れています。また最近、P型軌道でも惑星が発見されて話題になりました。(これは複数の太陽が見える惑星でも紹介しました。)

連星系に生命が存在し得る惑星はできるのか?

さて、太陽のような恒星が1つだけの場合と比べて、連星は善なのでしょうか悪なのでしょうか?(「生命を宿し得る惑星ができ、長い間存在し続けること」に対して善か悪かということです。)少し難しくなるので整理すると、ここで言う「生命を宿し得る惑星(ハビタブルプラネットとも呼びます)」とは、「恒星Aから1AUくらいの距離に位置する固体でできた惑星」と仮定します。これは恒星から1AUくらいの距離だと、暑すぎず寒すぎず、惑星の表面に海が存在できるだろうと考えるからです。またこの軌道位置をハビタブルゾーン(生命居住可能領域)と呼びます。

では連星系にある惑星はハビタブルゾーンに形成し、そこに留まり続けることができるのでしょうか?始めに述べたように、答えは「連星は悪」です。これを、連星間の距離という観点で解説していきたいと思います。(少し難しいので紙とペンを用意して、絵を描きながら考えるとわかりやすいかもしれません。)

a) 連星間の距離が0.1AU以下

連星間の距離がとても短い(0.1AU以下)場合には、このまわりでP型軌道(2つの恒星をぐるりとまわる軌道)をとる惑星がハビタブルゾーンに形成し、その軌道が維持することが可能です。これまで(2013年6月現在)5つの連星系にP型軌道の惑星が発見されています。(ちなみに、スターウォーズのタトゥイーンもこの場合と考えられます。)

b) 連星間の距離が0.1AUから10AU

連星間の距離をもう少し遠くして考え(ここからはS型軌道の惑星を考えます)、連星間の距離が0.1-10AUのときには2つの恒星からの重力によってハビタブルゾーンに惑星が形成することが難しくなります。(例えば、太陽系の惑星を考えてみて、木星の位置に仮に恒星があったとすると、地球の位置に惑星が形成することは困難になるということです。)

c) 連星間の距離が10AUから100AU

連星間の距離が10AUよりも離れると、系は面白い挙動を示します。このとき、連星間の距離の3分の1以上の位置にある惑星の軌道は不安定になります。つまり、もし恒星Bが恒星Aから30AUの位置にあるとすると、恒星Aから10AU以上離れた軌道には惑星が存在できなくなるということです。但し注意が必要なのは、これは「連星と惑星が同一平面上の軌道を取った場合」の理論的な見積もりです。実際には、10AU以上離れた連星の軌道は惑星と恒星Aの公転軌道面から傾いていると考えられ、話が複雑になります。

状況をもう少し説明すると、恒星Aの周りをまわる惑星の軌道は太陽系のようにほぼ同一平面であると考えて良いですが、恒星Aから10AU以上離れた恒星Bの軌道はこの面に対して殆どの場合大きく傾いていると考えられます。更にこのとき、恒星Bの軌道は円軌道ではなく、歪んだだ円軌道になりやすいのです。この「傾いて」「歪んだ」軌道を持つ恒星Bは、恒星Aの周りの惑星の軌道を重力で「揺らし」やすくなります。

このような場合では、恒星Aの周りの惑星は跳ね飛ばされたり、惑星同士が衝突したりします。例えば太陽系に太陽から100AU離れた位置に恒星を置いた場合をコンピュータシミュレーションで調べてみると、太陽系は数100万年で不安定になります。この跳ね飛ばしや衝突は、恒星Bに近い(恒星Aからは遠い)部分から起こり恒星Aに近い領域にはあまり影響を及ぼさないので、最終的には恒星Aの近くにコンパクトな惑星系が残ることになります。

d) 連星間の距離が100AUから1000AU

次に、連星間の距離がもっと離れている場合には、恒星Bが「揺らす」効果が小さくなり、結果として惑星の軌道をぐらぐら揺らすくらいになります。フリスビーがテーブルの上でぐらぐらしているようなイメージです。有名な系外惑星系である「かに座55番星系」は1000AU離れた連星を持っており、著者(レイモンド氏)らはこの系がぐらぐらしていると考えています。(参考ムービー

連星間の距離が1000AU以上

最後に、連星間の距離がもっと離れている場合です。連星間の距離が離れるとお互いに及ぼし合う重力は弱くなります。ですので、恒星Bの重力が恒星Aのまわりの惑星系に及ぼす影響は小さくなる、と普通は考えますよね?

実際は、連星間の距離が1000AUを超えると、惑星系に及ぼす影響は破壊的になるのです。この理由は以下です。連星間の距離が離れていると、恒星B自身が恒星Aやその周りの惑星系「以外」の力に敏感になります。その力とは、銀河系からの重力や、近くを通り過ぎた恒星からの重力などです。この外部の力によって恒星Bが「揺らされ」やすくなり、恒星Bの軌道は数10億年ごとくらいにとても歪んだだ円軌道になるのです。大きく歪んだだ円軌道になると、恒星Bは恒星Aの周りの惑星系にかなり接近し、惑星系を壊すことにつながります。(これは彗星が、1000AUくらいの遠く離れた場所から太陽近くまでやってくるのと同じです。)この現象は数10億年とかかるので、惑星に生命が生まれた後になって壊されるということもあり得ます。(参考ムービー

まとめ

以上のことをまとめたのが下図です。

ということで、連星系で1AUの位置の地球のような惑星に住みたいのならば、a) 連星間の距離がとても近いP型軌道の惑星か、d) 系が傾いたりぐらぐらしたりするけども100-1000AU程度離れた連星を持つ惑星系ということになりますね。


さて、いかがでしたでしょうか。最初からちょっとヘビーな文量でしたが、なんとなくわかってもらえたでしょうか?今は雰囲気がわかってもらえば十分だと思います。このシリーズの回を重ねていき、さまざまな角度からの「生命を宿し得る惑星」についての記事に触れてもらうことで、少しずつ理解の仕方も変わってくると期待しています。

PLANETPLANETシリーズ、次回は “ もっと住みやすい太陽系をつくる ” です。常日頃「宇宙人に会えたらいいなぁ」「別の住みやすい惑星に引っ越したいなぁ」と思っている方はご期待ください。

訳者:荻原 正博(コートダジュール天文台)

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