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PLANETPLANETシリーズ第2回 もっと住みやすい太陽系をつくる

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PLANETPLANETシリーズ第2回 もっと住みやすい太陽系をつくる

今回の『理の惑星』コラムは、PLANETPLANETシリーズ第2回です。第1回はこちらからどうぞ。

「生命を宿し得る惑星」をキーワードにしたウェブサイトPLANETPLANETに掲載されている英文記事を、『理の惑星』科学者が大いに意訳を含んだ翻訳をしてお届けします。

本シリーズは全5回を予定しております。シリーズ中に改善すべき点は改めていきたいと考えておりますので、ご意見・ご感想もお待ちしております。


原文:Build a better Solar System

残念な太陽系

太陽系にはがっかりさせられますね。もちろん地球には生命が住んでいて、森や海やフリスビーやビールがありますが、生命の住む惑星は地球だけです。他にも生命がいそうな天体もありますけど、まあそれらも非常に残念なものです。木星の衛星であるエウロパやガニメデには液体の水があると考えられていますが、それは何キロメートルもの氷の層の下に隠されています。土星の衛星であるタイタンには大気と湖がありますが、それらはメタンやエタンでできています。火星は、その昔地表に液体の水があったと思われますが、今はただの乾いた不毛な土地です。

では、どこに宇宙人がいるでしょう?我々は誰と宇宙貿易や宇宙戦争、宇宙スポーツをすれば良いんでしょう?SFの世界ではそういうすごいことができるのに、我々はできないのでしょうか?

他の星はとんでもなく遠くにあって、とんでもなく長い時間をかけて星間旅行はできないので、無理なんですね。宇宙人との交流を考えると、もう我々の住む太陽系内に希望を持つしかありません。

思考実験のルール

ということで、太陽系をつくり直す思考実験をしましょう。太陽系内で、生命が住み得る天体(惑星に限らず小さい天体でもよい)をたくさん作ることが目的です。

この思考実験には2つのルールがあります:

  • 1. 使える天体は実際に太陽系の中にあるものだけです。そして太陽系の中で比較的大きい、惑星(8つ)、衛星、準惑星を使いましょう。
  • 2. 使える軌道は実際に太陽系の中に現在存在する天体がとっている軌道だけです。つまり、惑星8つの軌道、準惑星の軌道、そして惑星の周りの衛星の軌道です。

やることは、現在太陽系にあるそれぞれの軌道に、太陽系の中にある天体をはめ込んでいくということです。例えば、現在の地球軌道に海王星を持ってきて、木星の衛星であるエウロパ軌道に地球を押し込んでみたいなことです。

ではまず手駒の確認をしましょう。下図が惑星と準惑星です。

Wikipediaより抜粋。

そして下図が使えそうな衛星です。

Wikipediaより抜粋。

これらの天体のうち、どれに生命を宿し得るかわかりますか?実はこれは難しい質問ですね。なぜなら「我々のような地球型の生命が誕生する条件を知らない」「地球型の生命とは異なる生命体も考え得るし、それらが誕生する条件はもっとわからない」からです。

ですので、シンプルに考えましょう。ここでは「生命が住み得る天体には液体の水が必要」とします。この条件を満たすには、材料(液体の水か氷)があって、それをちょうどよい温度に保つ必要があります。つまり、材料を持つ天体がいわゆる「ハビタブルゾーン」の中に位置すれば良いということです。(ハビタブルゾーンとは、太陽から遠すぎず近すぎず、調度良い温度の軌道領域を指します。太陽の周りではだいたい0.9-1.6AUの範囲と言われていたりします。)

ハビタブルゾーン内になくても、氷を溶かす熱が得られる場合もあります。例えば木星の周りの衛星(イオ、エウロパ、ガニメデ)は、木星の重力に引っ張られて衛星自体が伸びたり縮んだりしていて、衛星の内部で摩擦が生じて加熱されています。(イオは太陽系内で最大の火山活動をしていますが、これもこの熱によるものです。)この場合もOKです。

生命が住めそうな天体

さて、液体の水を持ちそうな有望株を紹介しましょう。

地球:

OKですね。

金星:

現在の金星はちょっとした地獄です。地表は鉛が溶けてしまうほど熱く、また乾燥しています。しかし、金星は地球の双子とも考えられいて、昔は地球と同量の水を持っていたと考えられます。ですので、若い金星を現在の金星軌道よりも涼しい場所に置いてあげれば、生命を宿すには良い惑星と言えるでしょう。

火星:

過去に地表を液体の水が流れた痕跡があり、また海が存在していた可能性もあります。ですので、火星は遠い昔には生命居住可能であった可能性があり、別の軌道に移してあげれば何十億年も住み良い惑星でいられるかもしれません。

巨大ガス惑星の大きな衛星(ガニメデ、エウロパ、カリスト、タイタン、トリトン):

これらの衛星は岩石と水でできていますが、太陽から遠い軌道にあるので氷天体となっています。(これらの中には氷の地表の下に海を持つものもありますが。)これらをもっと暖かい場所に持っていけば、海を持つ天体になり得るでしょう。

準惑星(冥王星、エリス、セドナ、セレス):

大きな衛星のように、これらは岩石と氷でできていると考えられているので、暖かい場所では海が存在できるでしょう。但し、惑星よりも小さいので、大気を長い間持ち続けるのは難しいでしょう。

ここで地表の無い巨大ガス惑星は除外しておきました。また水星は水をほとんど持たないので外しておきましょう。イオが外れているのも同じ理由です。

もっと住みやすい太陽系の姿

では、これらの有望株を、ハビタブルゾーンにつめ込まなければなりません。ここで必殺技「衛星軌道」が役に立ちます。例えば、地球の月軌道に有望株を入れ込みましょう。また、木星をハビタブルゾーンに持ってきて、木星の4つの衛星軌道に有望株を入れれば良いでしょう。

では、著者(レイモンド氏)が思いついた、もっと住みやすい太陽系の姿をお見せします!

  • ・火星を金星軌道におきました。これが太陽系で最も熱い生命居住可能惑星です。火星をここに置いた理由は、熱い惑星で水を保っておくにはより乾燥している惑星の方が良いからです。
  • ・地球はそのままですが、月軌道に土星の衛星であるタイタンを置きました。
  • ・木星を火星軌道に持ってきました。ここが太陽系で最も冷たい生命居住可能な軌道となります。木星自体は住めませんが、4つの衛星軌道にエリス、エウロパ、ガニメデ、金星を入れました。

これで、新しい太陽系には7つもの生命が存在し得る天体ができるのです。これで、ちょっとしたバカンスに他の惑星に旅行に行ったり、宇宙人に会ったりすることができますよ。今の太陽系より面白そうだし、たくさん生命がいそうでしょう!

著者(レイモンド氏)が思いついたものより良い太陽系を思いついたら是非教えて下さい。(『理の惑星』にでもレイモンド氏にでも。)

補足:「もっと住みやすい太陽系」の安定性

この新しい太陽系が、どれくらい安定なのか(弾き飛ばされたり、衝突したりしないか)をコンピュータシミュレーションで調べたところ、5000万年以上は安定であるということがわかりました。良かったです。

ただし、重力の大きな木星が近くにいることによって、地球の軌道がよりだ円軌道になることもわかりました。だ円軌道になるということは、軌道を1周する間に太陽からの距離が変わるということです。調べると、1年で最も太陽に近い位置と最も遠い位置とでは、太陽から受けるエネルギーが2%ほど変わりそうです。たかが2%ですが、それだけで「新しい地球」の気候を変えてしまう可能性があるということもコメントしておきます。


さて、いかがでしたでしょうか。木星を火星の位置に持ってくることなど、あまり科学的ではないように思えますが、実はそんなことはありません。もちろん、太陽系の惑星が将来このような軌道に組み変わることはほぼあり得ませんが、太陽系外惑星をみてみるとこのような配置もあながち不可能ではありません。

実際太陽系外において、この記事ででてきた「必殺技:衛星軌道」に生命居住可能な衛星がいる可能性は多分にあり、これを研究している研究者も世界には何人かいるのです。

PLANETPLANETシリーズ、次回は「太陽系形成の新モデル、Grand Tack仮説」です。太陽系が形成した過程を記述したこれまでのモデルで説明できないものに「火星の存在」があります。この問題を解決する新しいモデルが発表されました。そのモデルでは、あの惑星にあんなことをしてしまいます。ご期待下さい。

訳者:荻原 正博(コートダジュール天文台)

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