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PLANETPLANETシリーズ第5回(最終回) 地球の水はどこからやってきたのか?

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PLANETPLANETシリーズ第5回(最終回) 地球の水はどこからやってきたのか?

今回の『理の惑星』コラムは、アメリカ人研究者によって執筆された記事を翻訳してお届けするPLANETPLANETシリーズ第5回、最終回です。第1回第2回第3回第4回もどうぞ。


原文:Where did Earth's water come from?

私たちにとって水はありふれた存在ですよね。地球の表面の71%は海で覆われていますし、人間の質量の約60%は水です(ただし幼児ではより高く、成人ではより低い値になります)。ビールの90〜97%は水です。

しかし地球全体で考えると、実は地球はとても「乾燥」しています。というのも、地球には質量で約0.1%の水しか含まれていません。もし地球の全ての水を一つの玉として集めても、アメリカの大きさにも達しません。(注:海の質量は0.023%ですが、他にも地球内部に水は含まれています。また、ここでは気体、液体、固体問わずH2Oを「水」と呼びます。)

図1:地球全体の水を集めた球と地球の比較 (© Jack Cook/WHOI/USGS)

それでも地球には金星や火星よりも多くの水があります。それでは、地球は水に富む惑星なのでしょうか、水に乏しい惑星なのでしょうか?そしてなぜ地球には水があるのでしょうか?少し時計の針を戻してみると、この疑問は「地球の水はどこからやってきたのか?」ということになります。

約46億年前、地球や岩石惑星が出来た時代には、ガスや塵が円盤状になって若い太陽を取り巻いていました。この円盤内で惑星は形成したと考えられています。この円盤の中を見てみると、場所によって様子が違っています。
図2を見て下さい。まず太陽に近い部分では温かく、固体物質は石や金属で出来ています。一方で太陽から遠く離れると、固体成分は石や金属の他に水の氷なども含まれます。温度が低くなったために、水など凝縮温度の低い分子も固体となったのです。つまり、水は太陽の近くでは気体として存在しますが、遠くでは氷となっている、ということです。その気体と固体の境界、つまり温度が凝縮温度となる場所を「スノーライン」と呼びます(他にも雪線、氷境界なんて呼ばれることもあります)。水のスノーラインは、現在約2.7天文単位(天文単位=太陽と地球の距離)、火星と木星の間にあります。ちなみに、例えば一酸化炭素など凝縮温度の異なる分子に対しては、それぞれの「スノーライン」があります。
(注:「あれ?氷を温めたら気体じゃなくて液体になるのでは?」と思われた方もいるかもしれませんが、この円盤内では圧力がとても低いために液体の水は存在しません。地球上では大気圧が十分あるから液体の水が存在するんですね。)

図2:原始太陽と円盤、そして水が氷として凝縮する場所である「スノーライン」 (© Sean Raymond)

地球が位置する場所は、このスノーラインよりも内側、つまり水が気体として存在する領域です(そして、1気圧で水が液体となる「ハビタブルゾーン」内でもあります)。気体の水を獲得するのは難しいので、スノーラインの外側から氷を含んだ物質が降ってきた可能性があります。読者の方の中には「地球が出来た頃、地球はスノーライン付近にいたんじゃないの?」と思われる方もいるかもしれません。しかし、もしそうだとすると、地球はもっと水浸しだったはずです。もともとスノーライン付近で形成したと考えられている含水小惑星は、典型的に約10%の水を含みます。これはなんと地球の100倍の割合にもなります!もし地球が10%の水を持っていたとしたら、表面全体が270kmもの深さの海に覆われた惑星となってしまいます。私たちが住む陸地もなく、現在の地球とは全く違った世界になってしまいます。ですから、地球はスノーライン付近で形成したのではなく、水を含む天体が少量降ってきたのでは、と考えられるのです。
(注:正確な海の深さは、水がどのくらい含水鉱物としてマントルに保持されるかによります。また、小惑星とは木星の軌道もしくはそれより内側を回る小天体のことを指し、火星と木星の間には多くの小惑星が存在する「小惑星帯」があります。)

それでは、太陽系内のどの天体が地球に水をもたらしたのでしょうか。その犯人を突き止めるには、二つのヒントが隠されています。まず一つ目は、【化学的特徴】です。地球の水の組成は現在の木星や原始太陽系でのものとちょっと変わっています(より正確に言うと、水に含まれる水素の代わりに重水素が使われている割合が非常に高いのです)。そこで、地球に水をもたらした犯人も同じ組成を持っているはずです。二つ目は、【軌道】です。地球に十分な量の水を供給できる軌道になければ意味がありません。地球からとっても離れた天体、もしくは非常にレアな天体では役に立ちません。

有力な候補は、小惑星です。まず【化学的特徴】ですが、C型小惑星の水は地球とほぼ同じ組成(重水素の割合)を持っています。C型小惑星とは炭素に富む、遠方に多い小惑星です。一方で彗星の組成は、いくつかの例外を除いて地球の水とは異なっています。

図3:太陽系の天体における重水素/水素比。青い線が地球の値で、緑の点がC型小惑星、オレンジ、紫の点が彗星を表します。 (© Paul Hartogh / Nature)

軌道】もC型小惑星は問題ありません。惑星形成期には水に富む小惑星を地球に自然に運ぶような混合が起こっていたと考えられています(水に富む小惑星の供給の例(動画): © Sean Raymond)。ちなみに、彗星は太陽系の果てからやって来るため、木星の強大な重力の障壁をすり抜けてくる必要があり、地球にやってくるには小惑星よりずっと難しいです。

つまり、現在C型小惑星が地球の水の起源の有力な候補となっています。そのため、2014年度の打ち上げが予定されている探査機「はやぶさ2」はC型の小惑星「1999JU3」の探査を目指しているのですね。
さらに、近年提唱されたGrand tackモデル(第3回の記事)では、このプロセスが自然に起こることが示されました。Grand tackモデルでは、巨大ガス惑星の移動により、小惑星は跳ね飛ばされます。計算によると、小惑星帯に残ったC型小惑星の約10倍の天体が地球型惑星の軌道までやってくることがわかりました。そのため、このモデルでは地球の水はC型小惑星と同じ種族からもたらされるので、化学的特徴も当然一致するのです!

まとめ

地球は水が蒸発する高温領域で形成したので、誰かが水を供給してくれたはずです。有力な候補として、小惑星から水がもたらされた可能性があります。

補足

ここでは「水を含む天体が降着した」という一つの可能性が紹介されましたが、地球の海の起源は他にも提唱されており、まだ決着はついていません。他にも「地球を形成した岩石の中に少量の含水鉱物が含まれていた可能性」、「原始太陽の周りの円盤ガスの水素と石に含まれる酸素の化学反応」などがあります。これらの可能性についても知りたい方は、ぜひこちらの解説記事をどうぞ!


全5回のPLANETPLANETシリーズ、いかがでしたでしょうか。少々難しいと感じたこともあると思いますが、できればぜひもう一度第1回から読み直してみてください。そうすることで、少しずつ理解が進むものと考えています。

このシリーズはこれでひとまず終わりとなりますが、「もっと読みたい」という方はぜひ『理の惑星』まで(facebooktwitterなどでも)お知らせ頂けたらと思います。また、英語の原文を執筆しているレイモンド氏に感想を伝えたい方は、ぜひPLANETPLANETのウェブサイトに記載してありますメールアドレスにメッセージをお送り下さい。

訳者:國友 正信(東京工業大学)

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