理は、ささやかな日々の中で息を潜めている。この街の、無数の物語。それは惑星の秘密へと繋がる道。

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ハッピー・ロンリー・クリスマス 最終話(スノーライン)

物語に隠された、惑星の秘密

ハッピー・ロンリー・クリスマス 最終話(スノーライン)

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やがて薪も底をつき、火の勢いも弱まってきた。
おじさんは薪が入っていた大きな袋を担ぎ上げた。

「さあアイちゃん、そろそろ家にお帰りなさい。僕たちもそろそろ片付けをしようと思う」
「うん……まあ今日はお父さんもお母さんもいなくてやることもないんだけど、ね」
「いいことじゃないの、ケーキを独り占めするなんてどうかしら?」

大人が子供に悪戯を推奨していいのだろうか。

「なんだかおじさん達のつまらない話を聞かせてばかりで、すまなかったね」

気にしてないと答えながらアイは立ち上がった。
背後の少し離れたところまであったはずの地面の丸抜きは、アイのすぐ背後にまで狭まっていた。

「今夜は可愛らしいお客さんが来てくれて楽しかったよ。どうもありがとう」

重い物が多いから、とアイの手伝いの申し出はやんわりと断られたので、今度こそアイは家路に就くことにした。
たき火から離れると、途端に風と雪が強まった気がする。
降り積もった雪が強風で舞い上っていた。

家に帰ってから、リビングで食事を済ませ、ケーキのろうそくに火をつけては吹き消した。(面白いので3回やった)
本当に独り占めしてやろうと考えたが、結局4分の1ほど食べて満腹になってしまったので、早々に寝仕度をして寝ることにした。

「おやすみ。サンタクロースは仕事中だけどね」

翌朝

ベッドの下、少し外にはみ出すようにして綺麗に包装された箱が置いてあった。
台所には人の気配。どうやら二人とも帰ってきているようだった。

 

アイは転がるようにベッドから飛び出すと、喜び勇んで両親の元へ走り出した。
プレゼントの礼を言うと、案の定、両親はとぼけていたが、挟んであったカードに昨日の謝罪を殴り書いてしまっては、あまりにわざとらしいというところだ。

あれからしばらく経った今でも、アイは例の老夫婦のことを誰にも話していない。

あの日の翌日にすぐさま野営場に行ってみたが、キャンプの跡はおろか、最近、物を燃やした形跡も見当たらなかったのだった。
ただ、アイが座っていた丸太には袋が置いてあって、中からカードと白いマフラーが出てきた。

あのお揃いの赤いダウンジャケットの老夫婦。
まだ名乗っていない自分のことを、二人は確かに「アイちゃん」と呼んだ。
白いマフラーを口まで巻き、薪の入っていた大きな袋を持ち上げた姿は、どことなく……。

「メリークリスマス  世界中の人々が  幸せでありますように」

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【解説】スノーライン

原始惑星系円盤はガスと塵が混じって構成されている。
このうち、塵と呼ばれる粒子は2種類に大別されていて、一方は岩石を主成分としたもので、もう一方は氷を主成分とした粒子である。

氷は、岩石よりも融点・沸点が低いため、ある程度中心星から離れていて、照射されるエネルギーが小さくならないと熱せられすぎて、蒸発してしまう。
これは、ストーブに近いほど熱く感じることと概ね同じ理由である。

そのため、原始惑星系円盤の塵は中心星から徐々に離れてゆくと、ある距離を境に温度が凝固点を下回り、氷が粒子として存在すると考えられる。
スノーラインとは、氷の粒子が現れ始める境界線のことをいう。

ちなみに、宇宙空間での水の凝固点は-100℃程度である。
宇宙空間では気圧がほぼゼロであるため、地球上で考えられる水の性質とは大きく異なる。

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