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100億年の奇跡 第三話(物質循環)

物語に隠された、惑星の秘密

100億年の奇跡 第三話(物質循環)

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そして、賢史が退院する日の前日。

賢史の体はほぼ完治したが、気力は以前と変わっていなかった。あれ以来、隣りのおじさんとの会話は無くなってしまっていたが、それも賢史にとってはどうでもいいことだった。
その日もこれまでと変わらずに天井を見つめながら横たわっていた。すると突然、おじさんが呼びかけてきた。

「賢史、ちょっと付いて来なさい」

そう言うと、病室の外に向かって歩き出した。急に話しかけられたことと、以前とは少し違う命令口調に賢史は少し躊躇したが、何となくおじさんの後を追うことにした。
2人は病院の屋上に来た。賢史にとっては半年ぶりの外の空気だ。おじさんが話し始める。

「惑星科学という学問を知っているかい?」

唐突な問いかけに答えを迷っていると、おじさんは話を続けた。

「惑星科学というのは、惑星についての色々なことを研究する学問だ。そのままだけどな」

「要するに、『惑星がどうやってできたか』とか『惑星がどういう性質も持っているか』とかを研究する学問だ。『新しい惑星を発見』したり、『生命がどうやって生まれたのか』を解き明かそうともしている。私はね、大学で惑星科学を研究していたんだよ」

賢史は黙って聞いていた。おじさんが研究者だということも素直に受け入れられた気がした。

「前に、賢史が『また死ぬんだ』みたいなこと言っただろ。あれはな、惑星科学からしたら大きな間違いなんだ。」

おじさんは少し厳しい顔になり、声も大きくなってきていた。

「賢史は色々な物質から出来てるだろう。たんぱく質とか金属とか色々なモノから出来ているんだ。 そのモノっていうのは、どういうものなのかって考えてみたことがあるか」

賢史は黙って首を振る。

「賢史を作る、肉とか血とか骨とかは賢史が生まれたときにこの世に発生したのではなくて、賢史が生まれる前にも色々な形でこの世界に存在していたんだ。一部は植物とか動物みたいな『生き物』を作っていたし、土とか岩として『大地』を作っていたときもあった。海とか空気とかだったりもしたんだ」

「それだけじゃないぞ。もっと昔にもさかのぼれる。 地球の前は、『原始惑星』という地球の10分の 1くらいの大きさの天体だった。その前は、『微惑星』とか呼ばれる直径10kmくらいの大きさの天体で、その前は宇宙空間に漂うほこりみたいなものだった」

「まだ昔はあるぞ。そのほこりも、もっと前は他の惑星だったり、『恒星』だったりしたんだ。そういう天体が、爆発したりしてほこりみたいにバラバラになったんだ」

「こうやってモノを辿ってどんどん昔にさかのぼることができる。そして行き着く先は、137億年前 『ビッグバン』だ」

ここで少し息をついて、おじさんはさらに続けた。

最終話へつづく

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