理は、ささやかな日々の中で息を潜めている。この街の、無数の物語。それは惑星の秘密へと繋がる道。

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うそつきはだれだ(トランジット偽検出(黒点))

物語に隠された、惑星の秘密

うそつきはだれだ(トランジット偽検出(黒点))

夕暮れ時、まだ明るい空に街灯が灯り始めた。
人々が家路に就いてゆく中で、僕は橋の欄干に寄りかかってぼんやりと景色を眺めていた。夕暮れ時のような、移り変わりの最中を実感するような瞬間が好きだった。

と、近くを通りかかった誰かが僕の隣で同じように景色を眺めだした。

眼鏡をかけた中年の男性だった。

少し経って、その男性が不意に、
「あの提灯のまわりには虫が飛んでいるね」と、僕に言った。

「え、どこですか?」

「ほら、あの道路沿いの」と言って、100メートルほども離れた和風雑貨店の軒先を指差した。

「よく見えましたね、僕には全然見えないです」

「そうかい?私にはよく分かるが」

「目がいいんですね」

「はは、灯りの周りを飛んでるのって虫くらいだろう?」

なんだか、話がかみ合っていない。訳が分からず、黙ってしまった僕に、男性は得意そうに理由を語りだした。

興味もないのでほとんど覚えていないが、虫が灯りを横切るとチラついて見えるとかどうとか。

もう面倒臭くなったので「じゃあ行って確かめてきますよ」と退散することにした。

さて、目当ての雑貨店に来てみたが、その灯りは提灯ではなくて大きな回り灯籠だった。

「なんだい、虫なんていないじゃないか」

ただ、淡い色彩がくるくると色を変えていただけだった。

「あの嘘つきなおっさんめ、鼻を明かしてやる」などと息巻きながら、しばらく灯籠を眺めていると、何やら黒い大きな影がぐりんと回ってきた。

灯籠にガムがべっとりと張り付いていたのだ。
いたずらでもされたのだろうか。目玉のようだ。

大急ぎで戻って、律儀に待っていた男性に虫なんていなかったぞと言ってやったが、
「はは、まあそんなこともあるさ」
と、全然気にした様子もなく去っていった。
ちょっと空しかった。

小指の爪くらいの小さな羽虫がいたのは大目に見てもらうってことで。

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【解説】トランジット偽検出(黒点)

さて、今回は系外惑星のトランジットについてのお話です。

トランジット惑星とは、地球から見て、中心星の手前を惑星が横切るような位置関係にある系外惑星のことです。
惑星が中心星の光の一部を隠すので光の強さ(光度)が少し弱くなります。
これが一定の間隔(周期)で繰り返されるので、惑星の存在が推定できるのです。
少し前まで、NASAのケプラーという観測衛星の結果がニュースにもなっていたので ご存知の方も多いかもしれませんね。

上のような説明だけだと、周期的な光度変化が即ち惑星によるものだと思われてしまうかもしれませんが、一定の間隔で明るさが変動する原因は惑星だけではありません。

例えば、恒星の表面に存在する「黒点」があります。
活動的な恒星には大きな黒点が存在する可能性があります。
そのような恒星が自転していると、黒く、暗い点が一定の間隔で地球から見えることになります。
これが惑星のトランジットと似たような光度変化の原因となることは想像に難くありません。

なんだか恒星にウソをつかれてしまった気がしますね。

というわけで、4月1日「エイプリルフール」にちなんだお話でした。

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